独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
1章 不敵な彼の甘い唇

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 私の勤め先は、都心だけれどオフィス街というより私立大学や閑静な住宅地に囲まれた場所にある。地下鉄の駅から徒歩一分という立地で通勤にはとても便利だ。でも近すぎてあまり季節を感じる暇がない。

 結局、満開の桜をじっくり見る機会もなく、花弁は散ってしまったらしい。

 一階にコンビニや飲食店が入居している乙葉(おとは)ビル。エレベーターで七階に上がると、内線電話が置かれた無人のエントランスが目に入る。ダークトーンのブラウンでまとめられた重厚な雰囲気のなか、ダウンライトが優しい光を注いでいる。

 内線電話の上に『神谷総合法律事務所』と書かれたプレートが飾られていた。

 三十六歳の若き所長弁護士、神谷伊澄(かみやいずみ)が率いるこの事務所は、七名の弁護士が在籍する中堅の法律事務所だ。

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