独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

 高校生のとき、法教育活動の一環で講演に来ていた弁護士先生の話に興味を持ち、私は私大の法学部に進んだ。在学中に司法試験を目指して予備試験を受けたものの、ことごとく失敗し、卒業と同時にこの神谷法律事務所にパラリーガルとして就職したのだ。

 パラリーガルは、所内の経理や総務事務を担当する事務局とは異なり、先生方が効率的に業務を進められるように専門的な書類を作成したり資料を集めたり調査をしたりするのが仕事だ。

 この事務所に入るまで、そういった役割の仕事があることすら知らなかったけれど、入所して四年も経つと一通りのことはとりあえずできるようになる。

「おはよう冨永ちゃん。ちょうどよかった。ちょっと聞きたいんだけど」

 隣の席の長澤さんが艶やかなショートボブを揺らして私を見上げた。去年入所したばかりの新人パラリーガルである彼女は、私より二歳年上だ。

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