独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
終章 不機嫌な彼の溺愛

***

 ふわふわと空をただようような心地よさの中で、ふいに音がした。

 遠くの方から聞こえてくるのは、ギターの弦を優しく掻き鳴らす目覚まし用のアラームだ。

 全身を覆うだるさに「うう」とうめきながら手を伸ばしても、いつもの場所にあるはずのナイトテーブルに届かない。

「あれ……」

 接着剤でくっつけたように開きづらい目を、どうにかこじ開ける。カーテンの隙間から差し込んだ淡い光に、見覚えのない景色が広がる。

 えっと思って体を起こそうとしたとき、後ろから伸びてきた手にぎゅっと抱き寄せられる。素肌に直に手のひらが触れて、自分が何も身に着けていないことに気づいた。

 背中にぴたりと合わさる体温に、改めてすべてを思い出し、心臓が弾ける。

< 164 / 181 >

この作品をシェア

pagetop