独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
3章 不愛想な彼の誘惑
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昔から、嫌なことがあると周りから褒められるようになり、テストの点数が上がった。
自分にとって好ましくない状況に置かれたときに私が行う逃避行動が、親や先生のお手伝いだったりボランティアだったり、勉強だったりしたからだ。
「冨永さん、例の請求事件なんだけど」
「はい。訴状なら校正を終えてこちらに」
「ありがとう助かるよ」
「冨永さんどうしよう。江口さんから問い合わせが来てるんだけど、貴志先生が不在で。でも急ぎって言われて」
「きっと陳述書の件ですね。私が代わりにお話を窺っておきましょうか?」
さすが困ったときの冨永さん、頼りになる。
そんな言葉を方々で聞かされては微笑み返し、湧き出るように生じる仕事を次々と片づけているうちに時間はあっというまに過ぎていく。