一夜からはじまる恋
「疲れるだろうから、今日は帰ろうか。」
食事が終わってから、植物園を一周した湊は樹の体を気遣って早く戻ることを提案した。

「はい」

夕方になり、再び樹は湊の運転する車に乗り家路についた。
徐々に家が近づき樹は明らかに自分が寂しく思っていることに気が付く。

夕暮れ空のせいかもしれないと自分に言い訳しながら、運転する湊に気づかれないようにちらりと湊の姿を目に焼き付けた。



たった一晩。たった一夜。一緒に過ごしただけなのにこんなにも深くつながり、こんなにも心がひきつけられるのはどうしてなのか自分でもわからない。

初めてのデートで湊を好きになり始めていると気づかないふりをしていた自分の気持ちを認めるしかなかった。
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