一夜からはじまる恋
「申し訳ありません。大切な納涼会だったのに。ご迷惑おかけして」
「ちょうどよかったよ。はじめから周りの視線が痛くてさ、どうにかして抜け出したかったから。」
湊はそういうとスーツのジャケットを脱いだ。
樹の足に氷を当てながらネクタイも緩める。
「自分で」
という樹に湊は「だめ。かしなさい」と氷を渡さなかった。

二人はしばらく沈黙の中にいた。


気まずくて話始めたのは樹だった。
「初めて入りました。社長室。こんなことでもないと入れませんでした。」
「そう?」
樹の言葉に湊はそっけない返事をしてまた黙ってしまった。
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