一夜からはじまる恋
「今までありがとうございました。」
そう頭を下げるとずっと面倒を見てくれていた主任が花束を渡してくれた。
「最終日も最後の最後までしっかりと勤務するのがあなたらしかったわ。いままでお疲れ様。」
主任の一言に今までの時間が報われたように感じた。

徐々に持ち帰っていた私物も最終的に大きなバックひとつ分が残った。その分だけ時間の積み重ねを感じていると会社のロビーで社員から次々に挨拶されている湊が目に入った。

樹の姿を見つけると駆け寄ってくる。その指にはおそろいの結婚指輪。社長の顔から一瞬にして家での無防備な表情にかわる。


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