一夜からはじまる恋
樹が手術の準備を始める頃外科の医師が到着した。
「失礼します。高瀬樹さんのご家族ですか?」
その声に聞き覚えがあり湊が振り向くとそこには医大時代に同級生だった高瀬廉が立っていた。
「外科医ってお前か?」
「あぁ。結婚式ぶりだな。高瀬って聞いてそんな予感がしたんだ。」
廉は湊と樹の結婚式に出席したばかりだった。同じ苗字で大学時代はよく間違えられた。結婚式では廉を樹は親戚と勘違いしていたほど廉と湊は雰囲気もよく似ていた。
「奥さんの病状説明は受けたか?」
「あぁ。率直にどう思う?」
湊はすがる思いで廉を見た。
「血腫にメスを入れると大量出血を起こす可能性がある。内視鏡でとれば早産のリスクは下がるけど今回は切開したほうがいいな。早産になったとしても今妊娠8か月で生きられる可能性は十分にある。そっちのリスクの方がいいと思う。大量出血は奥さんの命を危険にさらすある。」
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