一夜からはじまる恋
冷静な廉の言葉に湊はうなずいた。
「頼む。助けてくれ。」
湊は廉に頭を下げた。
「オペ室、お前も入るか?」
「いいのか?」
「特別だぞ?」
廉は病院の院長の息子でもある。廉は特別にとオペ室に湊を入れることにした。

「これ、手術の時の同意書関係だ。輸血とか麻酔とか。サインができ次第奥さんに麻酔をかける。」
その言葉に湊の手が震えた。
「気を付けていたはずなんだ。なんのために医者やってたかわからないよな、こんなじゃ。大切な命も守れない。」
湊は震える手を両手で握りしめた。
「俺の奥さんは生まれつき病弱でさ。入退院を繰り返してる。」
湊は廉を見る。廉は樹の方を見ながら影のある顔を見せた。
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