一夜からはじまる恋
湊が手を握る中、樹は緊急手術をした。

「血腫が予想通り血管を巻き込んでた。血管をよけて血腫だけ取り除いて、残った血管の出血箇所は電メスで焼いた。」
「さすがだな」
「お前よりは器用だからな。」
湊は手術をするのが廉でよかったと思った。かなり手際よく処置をしていく廉は迷いがない。母体や胎児への影響を考えて時間も切開の方法も最低限のリスクで行ってくれていた。
湊は手術が終わると樹の頭を撫でた。
「よく頑張ったな」
その言葉にもまだ樹の意識はない。
「あとは一週間入院して出血がなければ退院だ。それまでに子宮の収縮が万が一始まったらマグネシウムの点滴で回避する。」
「あぁ」
「ま、説明しなくても分かるだろ?あとは。」
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