一夜からはじまる恋
湊は眠ったまま目を覚まさない樹を見ながら、樹が5年間も陸が目覚めるのを待っていたことを想うと心が痛んだ。

たった数時間で気が狂いそうだった。
ゆっくりと眠らせてあげたい気持ちと、早く目を覚ましてほしいという気持ちが入り混じる。

このまま目を覚まさないのではないかという不安にも襲われる。

たったひとりでこの孤独と戦い続けてきた樹を想うとその時の樹を励ましたいとさえ思った。

”まるごと過去も未来も抱きしめる”

そういった自分の言葉の中には理解しきれていない樹の苦しみや悲しさ、絶望・・・いろいろなものがあると知った。
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