一夜からはじまる恋
「もちろん」
「うれしい!」
樹の言葉に葵は屈託のない笑顔を向けた。
「私ね、一年の半分以上は入院していて、車いすで過ごすことも多いんだけどね、こんな人生でも主人と出会えて、主人と一緒に居られて本当に幸せなの。」
「素敵ですね。葵さんのご主人。」
「そうなの!主人が好きすぎて。私だってずっとそばにいたいくらい。でもね、それじゃ主人がどんどん社会から離れていくでしょ?そんなこと絶対に主人のためにならない。だから我慢してるの。樹さんもご主人と離れている時間は寂しいでしょ?」
「・・・はい」
樹は素直にそう思っていた。今朝も渋々仕事へ向かう湊の後ろ姿に不安でいっぱいになった。
「そんなときは私がついてるから、いつでも呼んでね?」
樹と葵はすぐに打ち解けあい連絡先を交換した。
< 275 / 349 >

この作品をシェア

pagetop