一夜からはじまる恋
廉が葵に向ける表情は穏やかで優しさに満ちている。

「そろそろ昼食だから一回病室に戻ろう」
廉の言葉に葵がしぶしぶ立ち上がる。すっとそんな葵を廉が支えた。
「私にとって食事って生きるための試練なの。だからこうして食事のたびに監督が監視に来るのよ」
小声で樹に言う葵に廉は首を傾げた。
「内緒話か?」
「まぁね。」
「また」
「またあとでね」
廉にエスコートされながら葵は自分の病室に戻った。

いろんな命の形がある。そんなことを考えながら樹は窓の外を見た。
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