一夜からはじまる恋
「私、和田さんにやきもちやいてました」
「やきもち?」
「はい。ごめんなさい。」
樹の言葉に理恵は優しく微笑んだ。
「やきもちをやいてもらえるような関係じゃないですよ?私よりも私の旦那との方が湊は仲良しでしたから。湊が突然私に連絡をくれたのも、旦那が連絡したんだと思います。」
「旦那さんが?」
「元ですけどね。無条件に優しい人でしたから。私を気にしてくれているんだと思います。だからこそしっかり歩みだしているって湊に見せなきゃ。旦那に伝わっちゃうから。」
理恵の瞳からは再び涙があふれた。
「理恵さんって呼んでもいいですか?」
「もちろん」
二人はその日からお互いのことをよく話すようになった。理恵は心の傷を樹に話すことで過去を自分自身が受け入れられるようになっていった。
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