一夜からはじまる恋
「孫ね孫。」
陸の母が慣れた手つきで永遠を抱く。
「頑張ったわね樹ちゃん」
「はい」
「生まれてくれてありがとう。」
陸の母の瞳からも涙があふれる。
陸の両親は陸が生まれた日のことを思い出していた。
これからこの子がどんな人生を歩むのか期待と少しの心配をしていたあの日。
まさか自分たちよりも早く息子が先立ってしまうとは思わなかった。
それでも息子がつないでくれた関係がこうして新しい命をつないでいく。
永遠を抱きながらつながる命の中で陸が永遠に生き続けていくような気がして涙が止まらなかった。
「かわいい。湊さんにそっくりね。」
陸の母の言葉に湊は微笑みで返した。
「この子の成長を一緒に見ていってください。」
と湊が言うと陸の両親は頭を深く下げながら新しい涙を流した。
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