一夜からはじまる恋
「陸」
陸はいつものように穏やかな顔をして眠っている。
「来たよ。陸。樹だよ。」
涙でうまく言葉がでない。
それでも樹は陸に話しかける。

「陸。ありがとう。もういいよ。もう、十分だよ。ありがとう。」
その言葉に陸の心拍数が少し高まる。
樹は陸の頬に触れた。
その頬はいつものようにまだ温かい。
「陸。ありがとう。全部全部ありがとう。私幸せだったよ。陸のおかげ。ありがとう。」
樹は陸に頭を下げた。

少しずつ呼吸が弱くなる陸と樹は陸の両親計らいで病室に二人きりになった。
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