一夜からはじまる恋
陸は亡くなるときもそのネックレスをしていた。樹は今日もしている。
そのネックレスを手に取り樹は涙が流した。

ひんやりと冷たいネックレス。それでもなぜか心が温かくなるのはネックレスにしてお互いに指輪を交換して持つことを決めた日の温かい陸とも思い出がよみがえったからだ。

「ありがとうございます。」
「それともう一つ。」
陸の父が今度は封筒を樹に渡した。

その封筒から出てきたのは預金通帳だった。
「?」
樹が陸の両親を見る。
陸の母は笑顔を向けた。
「これは樹ちゃんの結婚資金」
「?」
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