一夜からはじまる恋
樹が持つあかのうちわには『高瀬湊』と小さく書かれている。
湊の持つあおのうちわには『双葉樹』と書かれていた。

会長となった湊の父のあいさつから納涼会が始まる。
会長の次には湊のあいさつだった。

「初めましての方がほとんどかと思います。会長、高瀬茂雄に代わり新しく社長となりました高瀬湊と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私は決して甘くはありません。時に皆さんに対して厳しい態度をとることもあるかと思いますがお許しください。私は医大をでて医師になりました。でも今回こうして家業である会社に社長として入社したのは会社の未来を背負う覚悟を決めたからです。守ると決めたからには妥協はしません。変化する時代背景に合わせて古い伝統も時には変えていこうと考えています。必要であれば。こんな私ですがどうぞ、わが社をさらに盛り立て長く続けていくために皆さんの力を貸してください。そしてわが社をさらに反映させ、皆さんにお返ししていけるよう私も全身全霊で務めさせていただきます。私に遠慮はいりません。皆さんも思いをぶつけていただいて結構です。」
樹は受付で会った時のやわらかいイメージとは全く違った湊の姿に鳥肌が立った。
この人は生まれ持った人を惹きつける何かをもっている。
そう感じた。
< 5 / 349 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop