sugar*honey
『僕がやりますよ。ママはさっさとメイクの仕上げでもどーぞ。』

『本当?本当ははやくそういってくれないかなー、と思ってたの。』

いたずらっぽく笑った美恵子さんは僕の肩を叩いて、颯爽と休憩室に消えた。

2人分のグラスを洗って磨いて、今日の下準備にとりかかる。
…今日も夜が始まる。

そろそろ開店かな。

美恵子さんお気に入りのジャズCDをBGMにセットして流す。
と、

カラン、と出口が勢いよく開いた。

まだ、看板電気つけてねーんだけど。
誰だよ。

『いらっしゃいませ。』

馴染みの中年男が、にこやかに僕に片手をあげた。
僅かに肩が濡れて光ってる。

…雨か。

どうやら、店の外では雨がふってるらしかった。

『急にふられちゃったよ。今日のは激しくながいらしーぞ。表に自転車あったけど…映人君のだろ?』

『うん。いーや。歩いて帰る。』

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