それは線香花火のような
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一年目の社員は特に研修が多い。最初の半年間は頻繁に研修があり、社会人としての基本的なスキルやマナーを再教育するための研修から、実務研修まで幅が広い。我がチームの期待の新人・山下くんと庶務係の牧さんは、二人揃って研修に行くことが多かった。
清水さんは顔には出さないものの、彼が牧さんと話していると少しテンションが下がるのを最近分かるようになった。
清水さんと牧さんはタイプが真逆だ。牧さんは大人しいタイプという感じで、あまり垢抜けた感じはないが、元々が可愛らしい顔立ちをしており、人柄でも仕事面でも素直さと優しさが伝わってくる。清水さんはというと、まあ、そういうことだ。
昼休みに男子更衣室で山下くんと話していたとき、ふと気になったことを聞いてみた。
「山下くんって、清水さんのことどう思ってんの」
「どうって」
山下くんは面食らった顔をした。
「恋愛的な意味でタイプ?」
「いや......じゃ無いです。例えばですけど牧さんみたいな方がタイプです」
頭をかきながらちょっと照れ臭そうにいう様子を見て、ちょっと意外だと僕は思った。
「でも清水さんとは毎日LINEしてるんでしょ」
「まあそうですけど......向こうから来るので返さないといけないと思って。職場で気まずい雰囲気になりたくないので」
苦笑いをした山下くんは、「どうしましょうかね」と助けを求めるように僕を見た。
「興味ないのに二時間も長電話とかしたり夜仕事終わりに家まで送っていったりするから勘違いさせてるんじゃないの」
「それは頼まれたからそうした方がいいかなと思って」
あはは、と笑う山下くんに僕は呆れた。
こいつ、断れない性格か。仕事面では上司から頼まれた仕事を嫌な顔せず進んでこなす立派な後輩だと思っていたものの、恋愛面ではかなり厄介な男を好きになったものだ、と僕は清水さんに同情した。