追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「うん、分かった」
 真剣そのもののカーゴを前にして、私もスッと表情を引き締めて頷いた。
 その後はいつも通り、ゆったりとした時間が流れた。
「ところで、カーゴは村のうわさを知っている?」
「うわさ?」
「真っ白い巨大な猛獣が村に住み着いているってやつよ」
 私が振った話題に、カーゴは肩をピクンと跳ねさせた。ストロベリーパイをカットしていた手も、一瞬止まった。
「……あぁ、『凶悪な毛むくじゃら』って言われてるヤツだろう? 聞いた事はある」
 やはり、うわさは村中に広まっているようでカーゴの耳にも入っていた。
「驚かないで聞いてくれる?」
 実はこの時、私には元同級生の連日の来店よりも、差し迫った心配事があった。
 昼にやって来たター坊母子に最新の情報を聞かされてからずっと、気が気でなく過ごしていたのだ。しかし事が事だけに、カーゴに相談するべきかどうか考えあぐねていた。
 本音を言えば、カーゴの示す反応に怖さもあった。
「ああ」
 けれどカーゴを前にすれば、やはり胸の内に秘めておく事は出来なかった。
「実はね、私はその『凶悪な毛むくじゃら』を知っているの。いえ、知っているどころじゃないわ。私は責任を持ってあの子を養うって約束した。私たち、将来を誓った仲なのよ!」

< 146 / 205 >

この作品をシェア

pagetop