追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
パチパチと目だけを忙しなく瞬かせて固まる私に、カーゴは顔を寄せる。
「守れるかい?」
カーゴが耳元で、低く囁く。
耳に掛かる吐息の熱さにくらくらした。顔の火照りを自覚しながら、私はなんとかコクコクと首を縦に振って応えた。
「よし、いい子だ。さてアイリーン、いつまでもこうしていたいところだが、どうやらタイムアップのようだ」
「え?」
つられてカーゴの視線の先を追う。
「あ! 閉店準備をしなくっちゃ!」
壁掛け時計を見れば、いつの間にか閉店の十分前になっていた。私は弾かれたようにカーゴの腕を脱した。
そのまま逃げるように厨房に向かい、閉店準備に取り掛かった。けれど、ドキドキと騒ぐ鼓動は鎮まらなかった。顔の火照りも同様に、治まる気配がなかった。
「それじゃあアイリーン、また明日」
「うん、また……。あ! そうだわカーゴ、今度あの子が来たら通信機を鳴らしてもいいかしら? あの子の来店は気まぐれなんだけど、この通信機があればカーゴに合流してもらえるじゃない!? 三人でゆっくりお茶でもどうかしら?」
今日も私はカーゴと一緒に家路についていた。その別れ際で名案を思い付き、嬉々としてカーゴに切り出した。