追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました



 翌日以降、お店はとても平穏だった。
「ま、それもそっか。試験期間中はさすがに皆、ここには来ないものね」
「そうだな」
 カーゴは常と変わらぬ様子で、『いつもの』に舌鼓を打っている。私はその様子を見るともなしに眺めながら、ふいに一昨日の別れ際の一幕を思い出していた。
「ねぇカーゴ、そういえば一昨日の急用ってなんだったの?」
「っ!」
 先ほどまで順調に食べ進めていたはずのカーゴが、突然噎せかけた。
「いや、なに。ルークがカレーを作って待っているから冷めない内に帰って来いと言っていたのを思い出してな」
 一瞬だけ、それは果たして急用なのかと訝しんだが、たしかにカレーは熱い方が格段に美味しい。ならば、これも急用に違いないと思い直した。
「そっか」
「な、なにかあったか!?」
 カーゴの声は、何故か裏返っていた。
「ううん。なんでもないよ」
「そうか」
 私とカーゴ、二人きりの店内はしばし沈黙で満たされた。
「ねぇカーゴ、カーゴには隠し事ってある?」
 なんでこんな質問を投げかけたのかは分からない。だけど、気付いた時には口にしていた。
「……ある」

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