追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
最終章
◇sideカーゴ◇
マイベリー村にやって来てから、俺の日中は多忙だった。
「……なぁカーゴ、いい加減昼飯にしようぜ」
「待ってくれ、もう少しで感覚が掴めそうなんだ」
俺はアイリーンの店を訪ねる夜の時間以外のほとんどを、居間の鏡の前に張り付いて訓練に費やしていた。
――ポポンッ!
「お、耳と尾っぽだけくっ付いてら」
――ポポンッ!
「お、首から下が獣化してやがる」
――ポポンッ!
「お、……なんだ、今度は普通の人間じゃねーか」
「ハァ、ハァ……。ルーク、俺はあえて鏡の前で訓練している。だからいちいち実況中継せんでも自分で見えている」
「あぁ、そうかよ。んじゃま、俺は先に食い始めんてんぜ。ほどほどで切り上げて来いよ、せっかくの飯が冷めっちまうからな」
「分かっている」
ルークはヒョイとひとつ肩を竦めると、一人食堂へと戻っていった。
俺は一人になった居間で、鏡に向かって再び集中力を高めた。