追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
――ポポンッ!
今度こそと思って鏡を見れば、首から上だけが獣化した妙ちくりんな姿の俺が映っていた。
「ガウッ!」
クソッ!っと零したはずの悪態は、顔形状に伴って「ガウッ!」と自動変換された。俺は力なく床に膝を突いた。
やはり、獣化のコントロールは相当な難題だった。しかし俺は、なんとしてもこれを成さねばならない。
アイリーンを手に入れるため、俺は将来を懸けた。しかしこれは、捨て鉢な皇帝位の放棄でも、無謀な賭けでもない。俺はアイリーンも皇帝位も、どちらも手に入れる!
「ガゥウウウッッ!」
なんとしても、父と約束した十八歳までにこれを成し遂げる! そうして建国の始祖の血を引く皇帝として、アイリーンと共に諸手を挙げて玉座へと座ってみせる――!!
――ポポンッ!
「……ひとまず飯にするか。さすがに何度となく変化しすぎて頭痛がする」
人型に戻った俺はフラフラと立ち上がると、バスローブを引っかけてルークの待つ食堂に向かった。
すっかり精魂尽き果てた俺は、後ろに尾っぽをズルズルと引き摺っている事に気付かなかった。