追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました



「アニキ、ほんとに俺たち、これを撒くだけで一晩で10万エーンも報酬をもらえるんッスか?」
「おうよ! 俺がとっておきの伝手から取ってきた儲け話だ! おめえら、ありがたく思えよ」
 ジェームズさんの農園に近付くと、男たちの話し声が聞こえてきた。私は途中の農具小屋で戸口の前に立て掛けられた竹ぼうきを掴むと、慎重に声のする方に足を進めた。
 ギリギリまで近寄ると、適当な茂みに身を潜ませて男たちの様子を窺う。
「俺、やっぱりアニキの舎弟になってよかったッス! 上納金を納めた後に、俺と弟がはじめての舎弟だって言われて、上納金サギかと疑ったッスよ。でも、こんないい仕事回してくれるなんて、アニキはやっぱりヤクザの中のヤクザッス!」
「俺もアニキの事、見直したッス。連日5000エーンの日給で土方作業や収穫作業に励む日々。田舎のヤクザの実体は、雇われ労働者だと半ば諦めてたッス。だけど、ついに俺たちにも割のいい仕事が回ってきたんッスね!」
「おうよ! おめえら、さっさと用意して端から撒くぞ! まずは台車から缶をおろせ!!」
 ……聞き耳を立てているだけで、早々に男たちの正体が知れた。男たちは自称ヤクザで、金で雇われて農園になにかを撒こうとしているらしい。
「ヘイッ! 兄貴ッ!」
 舎弟兄弟は威勢よく答え、指示通り重そうな缶容器を台車からおろそうと手を掛けた。

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