追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 ……しかし、缶容器は一向に持ちあがる気配がない。
「っ! 重いッス!」
「こりゃだめだ! アニキも見てねえで、手伝うッス!!」
「……お、おめえら! 甘えてんじゃねぇ! ここで男を見せろ!」
 舎弟兄弟がアニキに協力を要請すれば、何故かアニキは目線を明後日の方向に泳がせて裏返った声で叫んだ。
「アニキ、ずるいッスよ!?」
「そうッスよ! こないだの解体作業で腰を悪くしてんのは俺たちも同じなんッスから!」
「……チッ、しょうがねえ! どれ!?」
 舎弟兄弟の非難を受け、アニキもしぶしぶ合流し、三人で缶容器に手を掛ける。
「いちにーの、さんっ!」
 三人は協力し、缶容器を台車からおろすのに成功した。
 三人の挙動はどこか滑稽で、傍目には喜劇でも見ているように感じる。しかしこの三人が悪事を目論んでいる事は瞭然で、私は気を引き締め直して三人を注視した。
 同時に私は、状況から缶容器の中身を分析していた。一晩で10万エーンもの大金を提示された悪事……。たぶん、缶の中身は除草剤か、それに近いなにかだろう。
 だとすれば、あの量の除草剤を撒かれればハウス内の苺は全滅。それどころか、土も使い物にならなくなってしまう。それではジェームズさんの農園が潰れてしまう。なんとしても阻止しなくては――!

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