追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました



 ……あ、雨が止んでる。
 学舎を出ると、昨夕から降り続いた雨が止んでいた。私は少しだけ軽くなった心で、女子寮へと続く屋根のない歩行路を進んだ。
「アイリーン」
 背中に声が掛けられて振り返る。
「カーゴ!」
 男子寮の方向から小走りに駆けて来たカーゴが、私の前で足を止めた。
 カーゴは隣国からの留学生で、私より頭ひとつ分以上高い長身に、均整のとれた体つきをしている。ただし今、私の前でスッと背筋を伸ばして立つカーゴは、何故か教室内では常に背中を丸めており、クラスメイトは誰もそのスタイルの良さに気付かない。
 同様に、カーゴの造作の美しさにも気付かない。カーゴは、長めの前髪で顔の半分ほどを隠してしまっているが、とても整った容貌をしている。
 私は髪の隙間から時折覗くシャープな目元にドキリとするし、グリーンの瞳の美しさには息をのむ。
 本人に訊ねた事はないけれど、なんとなく、カーゴは意図的に己の造作を隠しているような気がした。
 そしてカーゴは、私との接触を躊躇しない。周囲から近付かない方がいいと助言を受けても「俺はこの目で見ていない悪事を鵜呑みにはしない」と、そう言って一蹴してしまうのだ。

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