追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

「ここで販売する物の価値は私が決めます。私はカエラちゃんから受け取った、お父さんへの思いがつまった300エーンに、相応しいと思う商品を提供したにすぎません。ですから私はこれ以上、マルゴーさんからお金をいただくつもりはありません」
「アイリーンさん……」
 私の言葉を聞いたマルゴーさんは、顎の辺りに手を宛ててしばらく考え込んでしまった。
「……では、こうさせてください!」
 マルゴーさんはバッと顔を上げると、ポケットからメモ帳を取り出してなにかを書き始めた。書き終えるとメモ紙を切り離し、私に向かって差し出した。
 私は受け取ったメモに目線を走らせた。
 メモには『苺ミルクのファンより、このメモを見つけたあなたに苺ミルクをサービスします。気に入っていただけたら、ぜひまた注文をお願いします。よい一日を!』そう書かれていた。
「このメモをメニューブックに挟ませてもらえませんか? そうして最初に見つけた方に、私から苺ミルクを提供させてください」
 メモを読み終えた私は、マルゴーさんの粋な計らいに驚いて言葉を失くした。
「……す、すみません、勝手な事を言って。こういうのは、お店の流儀に反しますよね。忘れてください」
 答えない私に、マルゴーさんは慌てた様子で撤回の言葉を口にした。そうして私が握ったままのメモを回収しようと手を伸ばす。

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