追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「いいえ。ぜひ!」
私はその手をギュッと握り込んで、身を乗り出した。
「え?」
「ぜひ、お願いします! これを見つけた人は、絶対に笑顔になります。メモにある通り、とてもよい一日を送れます。そしてその人の笑顔は、また違う誰かの笑顔を引き出す事になるでしょう! とても素敵なアイディアです!」
私の言葉に、マルゴーさんは驚いたように目を見開いた。
「あ、ありがとうございます」
マルゴーさんはこれまでの勢いとは打って変わって、今は俯き加減で照れくさそうに答えた。
「……やはりあなたは素敵な人だ」
マルゴーさんの呟きは小さくて聞こえなかった。
「なんですか?」
「い、いえ! なんでもありません。娘は祖母が見てくれていますから、このままメニューブックの冊数分ここでメモを書かせていただきます。なにかお勧めのドリンクをお任せでお願いします」
なんと、マルゴーさんはこのサプライズを店内に置かれたメニューブック五冊分全てに行うつもりのようだ。それだとさすがに、してもらいすぎな気もしたけれど、マルゴーさんがとても幸せそうにメモを書き始めるのを見て、私はそのまま厨房に向かった。