追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
『真っ白い毛むくじゃらを見たんだ!』
その時、私の脳内にター坊の声が響き渡った。ハッとして、私は五歳の少年、ター坊の言葉を思い返した。
昨日お母さんと店を訪れたター坊は、私に『一昨日の雨の時、僕の布団よりもでっかい、真っ白い毛むくじゃらを見たんだ! 毛むくじゃらは物凄い目をしてこの店を見てた! あの凶悪な毛むくじゃらは絶対にこの店……ううん、お姉ちゃんの事を狙ってるんだ!』こう、必死に訴えていた。
お母さんは呆れ顔でター坊をたしなめて、私も話半分に聞いていたが……。
ゴクリと緊張に唾を飲む。
「ガルルルル」
……間違いない。
唸りを上げ、鋭い牙が覗く口から涎を垂らし、モフモフの毛で入口を埋め尽くす四メートルはあろうかという猛獣は、ター坊の言っていた『凶悪な毛むくじゃら』だ。そうして、この『凶悪な毛むくじゃら』が狙っているのは、私――!
母屋には足の悪いシーラさんがいる。絶対に、シーラさんのところに行かせるわけにはいかない。
そう考えると、これはむしろ好都合。……私がなんとしても、ここでヤツを仕留めるしかない!
何かで読んだ事がある……。こういうのは、視線を逸らしたらヤラレる……!