今、私はそれを捨てに行く。
 一緒に告白した2人の友達は、彼と付き合いたいわけではなく、ただ単に自分の思いを伝えたいだけのようだった。それが本音だろうが建前だろうがそんなことどうだって良かった。一応私も含め3人とも告白したけれど、だからといって関係が悪くなることもなかったから。

 私は彼へのラブレターに、返事はいらないと書いた。ホワイトデーにはいつも通りのお返しを貰った。告白をした後も、彼との関係は何も変わらなかった。自分が本当に彼のことが好きなのかも分からないままだった。

 時は過ぎ、彼に好きな女の子がいるという噂が立った。その女の子は学年で1番可愛いと言われているAちゃんで、私もその子とは仲が良かった。そして、その子も彼が好きだった。

 「もしかして、貴方も彼のことが好きだった?」

 付き合ったりはしなかったが、彼とAちゃんは両思い。彼と自分が同じ気持ちだったことに嬉しかったのだろう、喜んでいるAちゃんに話しかけに行った時だった。

 _____私は、彼のことなんて好きではない。

 「ううん、私ね、実は彼じゃなくて、違う子が好きなの」

 咄嗟に嘘をついた。好きでもない子のことを好きだと言ったことに、凄く申し訳なくなって、苦しくなった。

 _____私は誰のことも好きではないのに。

 Aちゃんは、そんな私の嘘の恋を張り切って応援してくれた。それに気づいた何人かの友達も応援してくれた。みんなとても優しかった。
 
 しかし私は気づいていた。みんなが優しくしてくれるのは、私が彼を好きではないからだということに。Aちゃんと仲良くしている子の中には、以前彼のことが好きだと言っていた子もいた。恐らく、Aちゃんには敵わないと諦めたのだろう。決してAちゃんが意地悪なわけでも、怖かったわけでもない。ただ、周りの人が勝手に諦めただけ。
 
 そして私はみんなの応援もあって、好きでもない子に告白することになった。

 彼とAちゃんが両思いだと知った、彼に片思いしていた友達は号泣した。その子を慰める傍ら、私はなぜか泣いている姿が羨ましかったのを、よく覚えている。
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