人生の楽しみ方
 一心不乱に食事を楽しんで、トイレに行っている隙に、君は会計を済ませてしまった。

 「昨日御馳走になっちゃったから、ね。」

 「御馳走様。」

 君の好意に甘えて、店を出る。出ると辺りはもう暗くなっていた。

 「もう帰っちゃうの?」

 「うん、そのつもり。」

 「もう1日居れば良いのに。」

 「でも、宿を取ってないし。」

 「俺のホテルに泊まったら?」

 「ゆっくり…じゃないの?」

 「何もしないって。約束。」

 「でも、私すぐ寝ちゃいそう。それでも構わない?」

 「うん。」

 「じゃあ、お邪魔しまーす。」

 正直、一瞬だけ期待したけど、君に嫌われたくなくて、気を引きしめる。二人でフラフラしながらホテルへ歩いて行くのはとても気持ちが良かった。風に吹かれて歩くのはとても気持ち良くて。

 「気持ち良いね。」

 「うん!遊んで美味しいもの食べて、少し酔って風が気持ち良いなんて、本当に幸せ。」

 そう、本当に幸せだった。君の手を取って子供の様に歩いた。
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