人生の楽しみ方
 ロビーで清算を済ませて、車に荷物を積む。

 「お邪魔します。」

 車に乗る時に小さく言う君に少し微笑む。

 「じゃあ、海岸沿いに走るよ。」

 「お任せします。」

 君は大人しく車に乗っている。信号で停まる度に君の横顔を盗み見る。君は俺の視線に気付くとちょっと微笑む。

 「なぁに?」

 「うん、見とれちゃった。」

 「もっと、自然に、普通にして欲しい。」

 唐突な要求に驚いて、信号が変わった事にも気付かずクラクションを鳴らされる。車を動かしながら返す。

 「無理。ひなさんには緊張しちゃう。」

 君は少し考えて言った。

 「じゃあ、緊張させない様にする。」

 そのタフな発想に驚かされる。君は信号で停まる度に俺の頬をつつく。しつこく何度もつつくのでついに君の手をシフトレバーに留めると君はクスクス笑う。つられて俺も笑った。

 「私の勝ち!」

 「ひなさんには敵わない。」

 「そうでしょ?」

 君は誘うのが上手い。緊張を解くのも。

 「今朝、あんなにしたくせに。」

 「あれはっ…、ちょっと我慢出来なくって、つい…。」

 「やらしかったよ?」

 車を停める。シートベルトを外して君の首筋にキスをする。君の首筋は滑らかで吸う力が強くなってしまう。君は小さく声を上げる。

 「駄目…。」

 君のシートベルトを外して君の身体をまさぐる。

 「駄目ってば。こんなとこで。」

 「ベッドの上なら良いの?」

 「そうじゃなくて!」

 君は少し怒って俺を押し返す。

 「ひなさんには敵わないから、つい襲っちゃった。」

 「んもぅ。狡いんだから。」

 二人で笑ってシートベルトを直す。

 「ねぇ、どっかで休憩して散歩しない?」

 「いいよ。」

 車を動かして俺達は近くの駐車場へ車を停めた。
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