人生の楽しみ方
 二人で夕飯を食べながら、たわいもない話をする。君が経験してきた話。きっと、君は知ったかぶりとか、嘘はつかないから。

 「ひなさんは、正直で、無駄が無いね。」

 「ん?」

 「普通は自分を良く見せようとするよ。」

 「時間の無駄だもん。嘘ついても身に付かないし。だから、ついていけないって思ったら、いいんだよ。」

 「そんな風に思わない。ひなさんは強いんだよ。俺はそんな女性に初めて会ったよ。」

 「強くても、傷付くんだよ。」

 「え?」

 「強いから傷付かないと思って攻撃する人が多いの。私だって苦しむのに。」

 何があったの?そう聞きたい。でも、聞けない。君はとても苦しそうだったから。

 「いっぱい、楽しんで?ひなさんが笑えるように。夏休みなんだから。」

 君は少し悲しそうな顔をして微笑む。

 「食べよ?」

 君は黙って食事をする。不思議だった。君は愛されるべき存在なんだと思ったから。

 「ひなさんを、家の近くまで送るよ。」

 「じゃあ、上野まで。」

 「うん、いいよ。」

 流石に大人だった。感情を隠す様に、会話をする。

 「ひなさん、帰りにもう一度展望台へ行こうよ。」

 「うん。」

 君は笑って頷いた。
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