人生の楽しみ方
 待ち合わせの時間より少し早かったけれど、君は先に待っていた。ショートパンツのセットを着た君は確かに少しカジュアルだったけれど、抑えた色味で上品だった。全てが計算された様な君の姿に俺は少し緊張してしまう。

 「待たせちゃったかな?」

 ソファに座っている君に近づく。きちんと化粧している君はとても美しくて、思わず息を飲む。

 「早く着いちゃった。」

 少し首を傾げていたずらっ子の様に笑う君。俺は少し緊張しながら手を差し出す。君は少し微笑んで手を載せて立ち上がる。そのネイルもきちんと手入れされていて、改めて気合いが入る。君の手をそのまま取りながらレストランへ向かう。

 「行こう。和食レストランにしたんだ。」

 君と並んで歩くと、周囲の人間の視線を感じる。流石にホテルの人間はジロジロ見たりはしないが、満面の笑みだ。

 「良かった。あんまり綺麗な格好じゃないからもっとハードル高かったらどうしようかと思った。」

 「ちょっとおてんばだけど、素敵だよ?」

 「本当?でも実は、この服、2000円しないの。」

 「とてもそんな風には見えない。」

 二人でクスクス笑いながら歩いてレストランへ入った。
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