人生の楽しみ方
 土曜の朝、俺は目覚めると君の姿を探す。君は俺の側で静かに眠っていて、俺は君の頬にそっとキスをする。

 「可愛いな。」

 君にそっと囁く。君の優しい横顔はとても無垢で。黙って見ていると君は目を覚ます。

 「起こしてくれていいのに。」

 「ひなを見ていたかったからさ。」

 「恥ずかしい…。」

 恥ずかしい事は散々したのに。君は変なところで恥ずかしがる。

 「ひな、俺はひなが大好き。俺はひながいい。ひながお腹一杯になるまで言うよ。」

 「…恥ずかしいけど、嬉しい…。」

 小さく言う君が可愛らしくてついつい抱き締めてしまう。君の傷が治って、幸せそうに笑える日まで、俺は君を甘やかすから。

 「ひなへの気持ち、テレパシーで伝われば良いのに。」

 君はくすりと笑って俺の頬を撫でる。

 「私の気持ちも、テレパシーで伝わったら良い。」

 「ひなの気持ちって?」

 「望さんが私を大事にしてくれる度に、私は涙が出そうになる程感動するの。私は少しづつ生き返るの。」

 たまらず君を抱き締める。

 「ひな、夜中に眠りながら泣いてる。それを見ると俺はもう、たまらないんだ。そんな君が深く傷付くなんて…。」

 「迷惑かけてたのね。ごめんなさい。」

 「謝らないで。ひなが、あんまり可哀想で。でも、ひなが前に進めているならそれでいいんだ。」

 君はとても優しく微笑んで、そして言ったんだ。

 「ありがとう。」

 俺はそのまま君を抱き締めて、背中を擦る。君が安心できます様に。君が幸せを感じられます様に。
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