人生の楽しみ方
 プラネタリウムが終わり、明るくなる。君はブランケットを丁寧に畳んでいた。

 「ひな?どうだった?」

 「うん、望さんと海で寝転がった事思い出したよ。覚えてる?」

 「覚えてるよ。」

 君は悪戯っ子の様に笑う。

 「また、連れてきて?望さんとの最初のデート、思い出すから。」

 顔を背けて君は言う。覗き込むと、君は真っ赤で。

 「見ないでっ。」

 「ひな、照れてるの?」

 「教えないもん…。」

 君の顔をこちらへ向かせると、君は恥ずかしさで死にそうになっていて、それがまた愛らしい。君の耳元でそっと言う。

 「照れてるひな、可愛い。」

 君は足早にプラネタリウムを出てしまった。追いかけて君を捕まえる。

 「ごめん、ひなが可愛くてついつい調子乗った。ごめん。」

 「嫌。」

 「ひな。」

 「私だって、私だって望さんを好きなのに。」

 ああ、君は俺を好きになってくれてるんだね。俺ばかり君が大好きで分からなくなってたよ。

 「ごめん。ひなが、俺の事好きになってくれてるの、忘れてた。ひなが大好きで忘れてた。」

 君はじっと俺を見つめる。そして照れながら俺の手を取って、小さな声で言ったんだ。

 「私だって、望さんがいい…。」

 人の目が無ければすぐに君を抱き締めるのに。抱き締めてそのまま愛してあげるのに。

 「ひな、帰ったら覚悟して?」

 「んもー、どうしてそうなるの?」

 「ひな、可愛いから。」

 君は、君がどんなに可愛いか分かってないんだ。自然に溢れる微笑み。君に恋をしない人なんているのかな。俺には君は勿体ない女性だと思う。でも、君だけは他の誰にも譲らない。

 「ひな、食事行こう。」

 君の手を握って、ランチに向かった。
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