偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「愛美ちゃん、なーんか今夜はやけに機嫌がいいみたいだな」

今夜はイルブールで演奏の日、いつものようにカウンターに座ってモスコミュールを呷っていると、ニヤニヤ顔の叔父が声をかけてきた。

「さては、男ができたな?」

「そ、そんなんじゃないって!」

思わずモスコミュールを噴きそうになって慌てて口元を押さえる。けれど、叔父は“わかりやすいやつ”と声を立てて笑った。そのとき。

「今夜もいい演奏だったな」

いきなり横から聞き覚えのある声がして振り向くと、笑顔の水城さんが立っていた。

「み、水城さん!?」

「あはは、そんなに驚くことないだろう? もうなにも隠す必要ないんだし」

言われてみればそうだ。

紆余曲折あって晴れて私と水城さんは恋人同士になった。だから、私がここで演奏していることも秘密にする必要なんかない。わざわざ彼と会うために優香メイクをしなくてもいい。

自由に恋愛できるって、いいな……。それでも、まだお父さんの前では優香でいなくちゃならないけどね。

でも、ここの店ではいつも眺めている人だったから……いきなり声をかけられるとびっくりするよ……。

嬉しいような、照れるような顔をしていると。
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