偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「ありがとうございます。じゃあ、タクシーでお願いします」

「これで叔父さんも安心ってもんだな、水城さん、妙な虫がつかないようにちゃんとこの子のことよろしく頼むぜ」

「ええ、任せてください」

そう言うと、水城さんは誰にも気づかれないように、カウンターの下で私の手をそっと握った。


「お忙しいところわざわざ送っていて、ありがとうございました」

アパートの前にタクシーが止まると、なんだか名残惜しい気持ちになる。

「遠慮なんかいい、君はもう俺の恋人なんだから、この先ずっと甘えてくれてもいいくらいだ」

水城さんが頼もしげに笑むと、私も温かな気持ちになれる。

「それに、あれからストーカーのやつにまた悩まされていないかも気になるし、俺は君の優秀なナイトにならないとだな」

「ふふ、大丈夫ですよ、水城さんのおかげで今のところなにもないです」

「それはよかった」

後部座席でそんな話をしていると、タクシーの運転手が、早く降りろとバックミラー越しに目で訴えてきた。

「おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」

そう言って、水城さんは私をすっと引き寄せて額におやすみのキスをした。

こんな風にさりげなくキスするなんて、やっぱり海外生活が長かったから……なのかな?
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