偽恋人からはじまる本気恋愛！～甘美な罠に溺れて～

赤くなる頬を抑えてタクシーから降りてドアをしめると、私はタクシーの姿が見えなくなるまで見送った。すると、すぐにスマホにメールが入った。

【今週末、とっておきのワインを用意して待ってる。料理はなんでも君の好きなものリクエストしてくれ】

今週末は水城さんのマンションで、一緒に食事を作ることになっている。

あぁ！　恋人がいる生活ってこんな感じなんだ。

毎日ドキドキして夜も眠れないくらいに彼のことを考えてしまう。ときには仕事中までも。

今の今まで会っていたのに、別れた瞬間にもう会いたくてたまらない。

久しぶりの恋愛に浮かれている自覚はある。けれど、水城さんと一緒に過ごす時間は私にとって、一番幸せで自分らしくなれる。

「ただいまぁ」

家に帰ると、優香がリビングでテレビを観ていた。

「おかえり、遅かったね」

「うん、イルブールに水城さんが迎えに来てくれてね……って、な、なによ？」

まだ何も話していないのに、優香が私の顔を覗き込んでニヤニヤしている。

「愛美、幸せそうだね。よかった、よかった！　いい顔してるね。恋する女って感じ？」