偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「私、お見合いしたんだってば」

「ブッ!! は!? え? お、お見合い!?」

な、ななにそれ!?

まったく見当違いの返事が返ってきて、私は口にした水を思わず噴き出した。

「だ・か・ら! さっきからそう言ってるじゃない、全然話聞いてないんだから、まぁ……お見合いって言うか、紹介されたっていうか……」

そんな話は初耳だ。私と違って彼女の性格はわりとオープンだし、なんでも私に聞いて! 聞いて!とせっついてくるはずなのに。

「いつ? 誰と? どこで?」

「う、うん……」

笑顔もなく、俯いて正座している優香の様子からあまり雰囲気のいい話ではなさそうだ。

私も優香に向き合うように座り、話を聞く姿勢になる。いつも陽気な優香がこんな浮かない顔をしているということは、なにか問題があったのか。

「父さんの勧めで昨日ね……あのさ、リストランテ・パリメラって知ってる?」

ふと、私と同じ顔をあげて優香が尋る。
“リストランテ・パリメラ”といえば、全国的にも有名な高級イタリアンの店だ。雑誌やメディアでもよく取り上げられていて、レストランのみならず最近はカフェや雑貨店なども展開している急成長中の企業だ。

「知ってるもなにも、あそこのイタリアンは叔父さんだって絶賛するくらい――」

「紹介された相手、 水城樹(みずしろ いつき)さんっていってね、そこの社長さんなの」

「……へ?」

パリメラの……しゃ、ちょう? ええっ!?

日付が変わって隣人も眠っている時間だというのに、私はつい大きな声を出して驚いてしまった。
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