偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
なんだか、シオンが私と水城さんの……いやいや! 何考えてるんだろ私。

「あの……」「あのさ……」ふたり同じタイミングで口を開いて顔を見合わせる。

「水城さんからどうぞ」

私が先に促すと、水城さんが急に赤くなって頬をカリッと人差し指で掻いた。

「あ、ああ……こうしてると、その、シオンが俺たちの……いや、なんでもない、今の忘れてくれ」

水城さん? もしかして……水城さんも、私と同じこと思ってた……とか?

つい、「シオンちゃん、まるで私たちの娘みたいですね」なんて言ったら、どうなっていただろう。

ふたりで真っ赤になっていると、シオンが「やれやれ」といったふうに、私の膝から飛び降りて、いつもの本棚の上にあがって丸くなった。

「シオンのやつ、気を利かせてくれたんだな」

「え?」

「これからは……俺たちの時間だ」

「あ、んっ」

このときを待ち焦がれていたと言わんばかりの性急な口づけだった。料理をしているときにされたものとは違う、情熱的なキス。

「水城さん……っ」

後頭部を大きな手で支えられ、逃げ場を失う。角度を変えて啄むように唇を奪われると徐々に思考が緩慢になってくる。

ボサッとソファに押し倒されると、すでに彼の瞳には艶めいた色が滲んでいた。

「ごめん、いい年してがっついてるのはわかってる。けど、正直に言うと、今すぐ君を抱きたくてたまらない」

初めてだけど、不思議と“怖い”という感情はなかった。むしろ、私も水城さんに触れたくて仕方がなかった。

「ベッド、行こうか」

「……はい」

今にも消え入りそうな声で返事をすると、水城さんは私の手を取った――。
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