偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「あ~! ちゃんとキッパリ断ればよかった!」

今さら後悔してももう後の祭り、というように優香はカーペットに突っ伏した。

優香と私は、見た目は同じだけれど、性格は全然違うと思っていた。でも、断れないところはどうやら同じのようだ。

「水城さんとのこと、お父さんすごく喜んでて……あんな嬉しそうな顔見てたら、私、断れなくなっちゃって……それで会うだけでもいいからって言われて会ったの、仕方なく」

途方に暮れるそんな姿を見て、私はハァとため息をついた。

優香の気持ちもわかる。きっと、紹介を断って父の悲しむ顔を見たくなかったのだろう。

父も昔からパパっ子だった優香をこの上なく大事にしている、大手企業の社長である水城さんを紹介したのも、自分の娘には幸せになってもらいたいからだ。かと言って優香の気持ちを無視して突っ走るのは腑に落ちない。

お父さんからこんなにも気にかけてもらえているのに……。

こんなこと優香に言ったら怒られるかもしれないけれど、ほんの少し優香が羨ましかった。
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