偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「来週の土曜日、とりあえず水城さんとデートして欲しいんだ。あ、これ水城さんの連絡先ね」

え? デ、デート!?

呆気に取られている私の前にすっと名刺を差し出された。

――株式会社 パリメラグループ代表取締役社長 水城樹

顔写真もないいたってシンプルな名刺を手にし、まじまじとそれを眺める。

一体どんな人なんだろう?と想像だけが膨らむけれど、私はとんでもないことに足を突っ込んでしまったんじゃないかと少し後悔した。

「優香の代わりに私がデートしたとして、万が一バレたらどうするの?」

話が勝手に進んでいく中、ふとそんな不安が浮かんだ。

「大丈夫よ。だって、私と愛美は見た目一緒でしょ? 髪の長さも色も、身長だって、それに声までそっくりじゃない? これでバレたらある意味すごいよ」

小学生の時、親でさえどっちがどっちだかわからなかったことがあった。いくら双子でも成長していくにつれ、それぞれ個性というものが出てくる。けれど、私と優香は二十三歳になった今でもその個性が一緒なのだ。昔、双子の姉妹が入れ替わる恋愛ドラマを観て、現実にそんなことが起こるわけない、と思ったけれど今、現実にそれが私の身に起ころうとしている。
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