偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
突然のカミングアウトに、思わずスマホを落としそうになる。

『あ、ごめん、もう仕事に戻らなきゃ、じゃあね』

「ち、ちょ……」

開いた口が塞がらないままポカンとしていると、優香は慌てて一方的に電話を切った。

優香ってば、いきなり電話してきたと思ったら勝手なんだから! それに、結婚って、そんなことひとことも言ってなかったじゃない……。

だから、優香はプレゼンのことが気になって仕方がなかったのだ。そう思うと腑に落ちる。

それなら、なおさら川野さんの成功を祈るしかないよね! そういえば……。

水城さんがパリメラの食事会に優香と川野さんを招待した帰りのことをふと思い出す。

――水城さんがくれたチャンスだ。それで、もし……もしもうまくいったら……。

結局、あのとき川野さんが優香になにを言いたかったのかわからずじまいだったけれど、プロポーズのことを聞かされ、ようやく川野さんが言いたかったことがわかった。そして、水城さんが言った“男の名を懸けた一世一代イベント”の意味も。

あ~なんだか私までドキドキしてきちゃった! 川野さん、お願いだから頑張って……。

私は優香のためにも川野さんのためにも、必ず成功するように天を仰いで神様に祈った。
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