偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
ハァ、今頃水城さんプレゼンで忙しいだろうな……。
時刻は十八時。
パリメラでは各企業がこぞってプレゼンの真っ最中だろう。
今日も仕事をそつなくこなし、そろそろ帰り支度を始めようかと思っていたとき。
「ピアノのコンサート? へぇ~、そんなコンサートに行くなんて珍しいじゃん」
オフィスに残っていた先輩社員の会話が聞こえてピクリとする。
「別に私が行きたかったわけじゃないけどさ、友達に誘われてね。しかも今夜のゲストはあの木内梨花なんだって、どうせ仕事が終わっても暇だし、行ってこようかなーって」
え? ちょっと待って? 今、木内梨花って言った?
「せ、先輩! 木内梨花さんがゲストのコンサートって、今夜……ですか?」
ガタンと椅子から立ち上がって会話している先輩に問うと、いつも物静かな私からただならぬ雰囲気で声をかけられたことにぎょっとして驚いていた。
「え、ええ。そうだけど……有坂さん、どうしたの?」
目をぱちくりさせて私を怪訝に見る先輩にハッと我に返る。
「あ、すみません。木内梨花さん、ファンなんです。だからつい反応しちゃって……」
笑って誤魔化すと、先輩たちは顔を見合わせて首を傾げた。
どういうこと? プレゼンの食事会のとき、ピアノ演奏を梨花さんに頼んでたって、水城さんそう言ってたよね?
それなのに、どうして今夜別のコンサートのゲストに?
嫌な予感がする。こういうときの胸騒ぎは大抵当たる。
私は椅子にあったバッグを勢いよく引き寄せると、オフィスを飛び出した。
時刻は十八時。
パリメラでは各企業がこぞってプレゼンの真っ最中だろう。
今日も仕事をそつなくこなし、そろそろ帰り支度を始めようかと思っていたとき。
「ピアノのコンサート? へぇ~、そんなコンサートに行くなんて珍しいじゃん」
オフィスに残っていた先輩社員の会話が聞こえてピクリとする。
「別に私が行きたかったわけじゃないけどさ、友達に誘われてね。しかも今夜のゲストはあの木内梨花なんだって、どうせ仕事が終わっても暇だし、行ってこようかなーって」
え? ちょっと待って? 今、木内梨花って言った?
「せ、先輩! 木内梨花さんがゲストのコンサートって、今夜……ですか?」
ガタンと椅子から立ち上がって会話している先輩に問うと、いつも物静かな私からただならぬ雰囲気で声をかけられたことにぎょっとして驚いていた。
「え、ええ。そうだけど……有坂さん、どうしたの?」
目をぱちくりさせて私を怪訝に見る先輩にハッと我に返る。
「あ、すみません。木内梨花さん、ファンなんです。だからつい反応しちゃって……」
笑って誤魔化すと、先輩たちは顔を見合わせて首を傾げた。
どういうこと? プレゼンの食事会のとき、ピアノ演奏を梨花さんに頼んでたって、水城さんそう言ってたよね?
それなのに、どうして今夜別のコンサートのゲストに?
嫌な予感がする。こういうときの胸騒ぎは大抵当たる。
私は椅子にあったバッグを勢いよく引き寄せると、オフィスを飛び出した。