偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「君のおかげだ」

「いえ、とんでもないです……」

そんなふうに言われると照れる。赤くなって俯こうとしたとき、父が店を出ようとしているのが目に入った。

「あ、あの、すみません!」

水城さんの横をすり抜けて、私は父を追いかけた。


「お父さん! 待って!」

店の外に出ると、父は秘書の運転する車に乗ろうとしているところだった。父は私に気づいて足を止めた。

呼び止めたのはいいけれど、まったく言葉を考えていなかった。二の句が継げないでいると、父が無言で私に向き直る。

「私のピアノ、どう……だった?」
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