偽恋人からはじまる本気恋愛!~甘美な罠に溺れて~
「演奏をお聴きになっているときの有坂社長、すごくいい表情をなさってましたよ。本当は楽しんでいたんでしょう? 隠すことないじゃないですか」
水城さんに言われて、父はまるで喉まで出かかった“そんなことはない”という否定の言葉を呑み込むようにして唸ると押し黙った。
「彼女はここに有坂社長がいるとわかっていて来たんです。決して逃げなかった。だから、有坂社長もちゃんと愛美さんに向き合ってくれませんか?」
しばしの沈黙の後、父が長く重いため息をついて私に向き直る。何を言われるか想像もつかない。水城さんの前で罵声を浴びせられるかもしれない。そんな不安が私を取り巻き、ドキドキと心臓が波打つ。
大丈夫。だって、水城さんが傍にいてくれるんだから。
何度も喉を鳴らし、私はすべてを受け入れる覚悟を決めた。
「……相変わらずお前のピアノは順子とは違う音色だったな。変わってない。順子がお前に才能がないと言ったのは、おそらく自分と同じ色に染まらないから面白くなかったんだろう」
「え……?」
水城さんに言われて、父はまるで喉まで出かかった“そんなことはない”という否定の言葉を呑み込むようにして唸ると押し黙った。
「彼女はここに有坂社長がいるとわかっていて来たんです。決して逃げなかった。だから、有坂社長もちゃんと愛美さんに向き合ってくれませんか?」
しばしの沈黙の後、父が長く重いため息をついて私に向き直る。何を言われるか想像もつかない。水城さんの前で罵声を浴びせられるかもしれない。そんな不安が私を取り巻き、ドキドキと心臓が波打つ。
大丈夫。だって、水城さんが傍にいてくれるんだから。
何度も喉を鳴らし、私はすべてを受け入れる覚悟を決めた。
「……相変わらずお前のピアノは順子とは違う音色だったな。変わってない。順子がお前に才能がないと言ったのは、おそらく自分と同じ色に染まらないから面白くなかったんだろう」
「え……?」