偽恋人からはじまる本気恋愛！～甘美な罠に溺れて～

そういえば、優香は同僚とパリメラによく行くって言ってたっけ……あー、これじゃ辻褄が合わない。つい口が滑って自分のこと言っちゃった。それに、いくらなんでも行ったことがないなんて失礼だったかな……。

思えば、優香が水城さんを紹介された時にどういう話をしたとか、そんな情報のすり合わせをしていなかったことに気づく。手始めに他愛のない世間話からするんだったと後悔する。

「あ、あの……友達とは行くんですけど、こういうデートでは行ったことがないっていう意味で……」

うぅ、いくらなんでも無理やりな言い訳……　もう、変な汗出てきた。

私はその場を誤魔化すように乾いた笑いを浮かべ、ごくごくと水を飲んで喉を潤した。

「ああ、なるほど。じゃあ、今度連れて行くよ。デートでぴったりの雰囲気のいい店舗があるんだ。きっと君も気に入ると思う」

水城さんは私の話に違和感なく納得したようで、私もホッと胸を撫で下ろす。

水城さんとの会話はまるで綱渡りのようだった。メインディッシュは私の好きな白身魚のポワレだったけれど、ほぐれることのない緊張にその味を堪能する余裕もなかった。
下手に私から話を切り出すと、またさっきみたいにボロがでる。そこで私は名案を思いついた。

「あの、初めてお会いした時、私、すごく緊張してしまって……色々聞いたと思うんですけど、水城さんのこと、もう一度教えてくれませんか？」

「ああ。いいよ、俺の話なんかでよければいくらでも」